Letter

免疫学:膣に遊走した記憶B細胞が管腔で抗体を分泌する

Nature 571, 7763 doi: 10.1038/s41586-019-1285-1

粘膜バリア中に分泌された抗体は、さまざまな病原体から宿主を防御する働きをし、ワクチンによる免疫獲得成立の基盤となる。I型粘膜(腸管など)では、局所の形質細胞から分泌される二量体IgAが多量体免疫グロブリン受容体を介して輸送され、ウイルスに対する防御の確立に寄与する。しかし、雌性下部生殖管の管腔に代表されるII型粘膜は多量体免疫グロブリン受容体や形質細胞に乏しく、抗体が局所に供給されるかどうか、また供給される場合の機序は明らかになっていない。今回我々は、マウスへの性器ヘルペス感染の実験系を用いて、初感染では雌性生殖管の粘膜固有層における形質細胞の存在が確立されないことを示す。これに対して、2回目に単純ヘルペスウイルス2型を感作した際には、循環血中の記憶B細胞が雌性生殖管に進入し、生殖管の管腔内への迅速かつ強力な抗体分泌の供給源となる。組織常在型記憶CD4 T細胞はインターフェロンγを分泌し、これはCXCL9やCXCL10を含むケモカインの発現を誘導する。循環血中の記憶B細胞は、CXCR3依存的に膣粘膜へと誘導され、ウイルス特異的なIgG2b、IgG2c、IgAを管腔内に分泌する。これらの結果から、循環血中の記憶B細胞が、雌性生殖管において粘膜抗体の迅速に誘導可能な供給源として機能することが明らかになった。

目次へ戻る

プライバシーマーク制度