Article

分子生物学:ヌクレオソーム中のDNA損傷の検出の際には、DNAのヒストン結合面のずれが引き起こされる

Nature 571, 7763 doi: 10.1038/s41586-019-1259-3

遺伝子調節、DNA複製やDNA修復には、ヌクレオソーム中に組み込まれたDNAへの接近が不可欠である。ヒトでは、UV照射によってゲノムのあらゆる場所に生じるピリミジン二量体の検出は、UV損傷DNA結合タンパク質(UV-DDB)複合体が行うが、クロマチンではヌクレオソームがDNAへの接近の妨げになるので、これらの損傷がクロマチン中でどのようにして認識されるかはいまだに不明である。今回我々は、6–4ピリミジン–ピリミドン二量体のDNA損傷を1か所持つヌクレオソームと、それを模倣したDNA損傷1個をさまざまな位置に持つ複数のヌクレオソームを使って、これらのヌクレオソームに結合したUV-DDBのクライオ(極低温)電子顕微鏡構造を明らかにした。UVで損傷したヌクレオソームの溶媒に面したDNAの副溝に損傷が位置する場合には、UV-DDBはヌクレオソームの構造をほとんど変化させずに損傷に結合することが分かった。損傷がヒストンコア側にあって露出していない場合には、UV-DDBがヌクレオソームのDNA結合面をずらして接近できるように損傷部位を露出させることで選択的に結合する。これらの知見によって、しっかりと位置決めされたヌクレオソーム中の隠れている損傷部位を、UV-DDBがどのように検出するかが説明でき、高い親和性を持つDNA結合タンパク質がヌクレオソームDNA中の隠れた部位に接近できるようにする、slide-assisted site exposure(滑り移動による部位露出)という仕組みが明らかになった。

目次へ戻る

プライバシーマーク制度