ナノスケール材料:離散化されたEshelbyねじれを有するらせん状ファンデルワールス結晶
Nature 570, 7761 doi: 10.1038/s41586-019-1308-y
ファンデルワールス構造のねじれトポロジーを操作する能力によって、それらの電気的特性や光学的特性を任意に調節できる新しい自由度が得られる。ねじれ角は、層間結合を通してねじれ構造の電子状態、励起子、フォノンに強い影響を及ぼし、エキゾチックな光学的挙動、電子的挙動、スピントロニクス的挙動を引き起こす。ねじれ二層グラフェンでは、特定のねじれ角において、モアレパターンを伴う長距離周期性によって、平坦な電子バンドや高度に局在した電子状態が導入され、その結果、モット絶縁体挙動や超伝導が生じる。理論研究からは、こうしたねじれ誘起現象が、遷移金属ジカルコゲニドや黒リンなどの層状材料に共通であることが示唆されている。ねじれファンデルワールス構造は、転写積層方法を用いて形成されることが多いが、この方法は層間結合が比較的強い材料には用いることができない。簡便なボトムアップ成長法があれば、ねじれファンデルワールス構造を形成する代替手段が得られる可能性がある。今回我々は、らせん転位(カイラルトポロジカル欠陥)に関連したEshelbyねじれがナノスケールからメソスケールの規模でそうした構造の形成を駆動できることを実証する。合成においては、まず積層方向に沿って成長するナノワイヤーに軸らせん転位が導入され、これによって連続的にねじれたファンデルワールスナノ構造(総ねじれ率はナノワイヤーの半径によって決まる)が生じる。総ねじれ率は基板によって決まるため、基板に付着させたねじれナノワイヤーがさらに半径方向に成長すると弾性エネルギーが増大する。蓄えられた弾性エネルギーは、決まったねじれ率を一連の離散的ジャンプにおいて調整することで減少させられる。これによって、さまざまなねじれ角を持ち原子レベルで急峻な界面によって境界が定まったナノプレートのらせん状集合体からなる、メソスケールのねじれ構造が形成される。さらに我々は、構造の半径方向のサイズを制御することによってねじれトポロジーを調節できることを示す。

