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流体力学:惑星核内の乱流対流の長さスケール
Nature 570, 7761 doi: 10.1038/s41586-019-1301-5
対流は、惑星の流体核における基本的な物理過程で、熱と化学種の主要な輸送機構であり、惑星磁場の主要なエネルギー源でもある。特徴的な流速や長さスケールなどの対流の重要な性質は、惑星の自転、浮力駆動、磁場に強く依存しており、これらは全て現実的な条件を用いたモデル化が困難なため、惑星核内では十分に定量化されていない。強い磁場がない場合は、核の対流は速く回転する乱流の領域にあると予想されるが、これはまだほとんど調べられていない。本論文では、こうした領域を調べるために設計した磁場のない数値モデルを組み合わせて用いて、対流の長さスケールは現実的なパラメーターの値に近づくにつれて粘性に依存しなくなり、流速と惑星の自転によって完全に決定されることを示す。より小さなスケールでは流速が急速に減少するので、この乱流対流の長さスケールが、流れのエネルギー輸送長さスケールの下限になる。この手法を用いると、月などの磁場を持たない小さな核のダイナミクスの現実的なモデル化ができる。より大きな惑星核の条件のモデル化にはまだ適用できないが、乱流対流の長さスケールが粘性に依存しないという事実から、こうした物体への信頼性のある外挿が可能になる。我々は、地球の核の条件では、磁場がない場合の乱流対流の長さスケールが約30 kmであり、10 mという粘性長さスケールより数桁大きいことを見いだした。従って、将来のより現実的な地球ダイナモシミュレーションでは、少なくとも磁場が弱い領域においては、数値を得にくい粘性スケールを解明する必要性が緩和される可能性がある。

