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気候科学:南極沖のポリニヤは南半球の気候異常に関連する
Nature 570, 7761 doi: 10.1038/s41586-019-1294-0
冬季の海氷域の大きな開口部である南極沖のポリニヤは、対流混合による深海熱の急速な放出によって維持されると考えられている。こうしたまれな現象は、深海の性質と循環を変える可能性があるが、ポリニヤの形成機構はよく分かっていない。本論文では、海洋上層の条件の事前調整と気象の擾乱が同時に生じることが、南大洋のウェッデル海域にポリニヤが出現する原因であることを実証する。マウド海膨の海山付近で1976年以来最大のポリニヤが形成された2016年と2017年に収集された、自律型プロファイリングフロートの観測結果からは、激しい嵐の通過によってポリニヤの形成が開始されるとともに変化し、著しい熱損失によってポリニヤ中の深い鉛直循環が駆動されたことが明らかになった。風によって駆動される記録的な強さの湧昇によって海洋上層の塩分成層が弱まり、これによって2016年と2017年に不安定化が生じやすくなった。我々は、以前のウェッデル・ポリニヤもおそらく同様に異常な条件下で発達し、そうした条件は人為起源の気候変動の結果強まると予測される南半球の気候変動モードと関連していることを示す。

