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神経科学:SHANK3変異体カニクイザルにおける非典型的な行動と神経接続
Nature 570, 7761 doi: 10.1038/s41586-019-1278-0
SHANK3(SH3 and ankyrin repeat domains 3)遺伝子の変異や破壊は、自閉症スペクトラム障害に対する浸透度の高い単一遺伝子リスク因子であり、フェラン–マクダーミド症候群の原因である。最近の遺伝子編集技術の進展により、遺伝子改変非ヒト霊長類モデルを作出することが可能になってきた。このようなモデルは齧歯類モデルよりも自閉症スペクトラム障害により近い行動や神経の表現型を示すと考えられ、より効果的な治療法につながる可能性がある。今回我々は、カニクイザル(Macaca fascicularis)でCRISPR–Cas9を用いた、生殖系列を介する遺伝可能なSHANK3変異の作製と、そのF1仔について報告する。体細胞のジェノタイピングと脳生検により、これらのサルでSHANK3遺伝子が変異していること、そしてSHANK3タンパク質レベルが減少していることが確認された。機能的磁気共鳴画像化法(fMRI)データの解析により、局所的および全体的な神経接続パターンが変化していることが分かり、神経回路の異常が示唆された。創始者変異体では、睡眠障害や運動障害、反復行動の増加に加えて、社会性障害や学習障害も見られた。以上より、これらの結果は、自閉症スペクトラム障害やフェラン–マクダーミド症候群を特徴付ける、SHANK3遺伝子と神経回路の機能障害および行動表現型のいくつかの側面に類似している。

