分子生物学:ヘテロクロマチンが反転型の核と従来型の核の区画化を引き起こす
Nature 570, 7761 doi: 10.1038/s41586-019-1275-3
哺乳類細胞の核では、ゲノムの活性なユークロマチン領域と不活性なヘテロクロマチン領域が空間的に明瞭な分離を示す。従来型の核を顕微鏡で観察すると、ユークロマチンは核の内部に、ヘテロクロマチンは核の周辺部に局在する。Hi-C法と呼ばれるゲノム規模の3C(chromosome conformation capture)法による解析では、この分離は、ユークロマチン区画内およびヘテロクロマチン区画内の接触の豊富さと、これらの区画間の接触の欠乏を示す格子状パターンとして表れる。区画の形成については、例えば、ヘテロクロマチンの核ラミナへの誘引、類似したクロマチン同士の選択的誘引、活性なクロマチンにおけるクロマチンの易移動性、転写に関連したユークロマチンのクラスター形成など、多数の機構が提案されている。しかし、これらの仮説は、従来型の核ではクロマチン内相互作用やクロマチン–ラミナ相互作用をほどくことが困難であるため、決定的ではない。夜行性哺乳類の桿体細胞の反転型の核における間期染色体の顕著な再編成は、空間的区画化の基礎となる機構を解明する機会を提供する。今回我々は、桿体の反転型の核のHi-C解析と、顕微鏡法およびポリマーシミュレーションとを組み合わせた。その結果、反転型の核では、ヘテロクロマチン領域間の誘引が、区画化の確立にも、セントロメア周辺のヘテロクロマチン、条件的なヘテロクロマチン、ユークロマチンからなる同心性のシェル構造の確立にも非常に重要であることが分かった。ヘテロクロマチンとラミナの間の相互作用が加わると、同一モデルでも、従来型の核の組織化が再現された。さらに、我々のモデルから、ユークロマチンの強力な相互作用が関与する区画化の機構が除外できた。まとめると、我々の実験とモデル化から、ヘテロクロマチン領域間の誘引が反転型の核および従来型の核において活性と不活性のゲノムの相分離に不可欠であり、一方、クロマチンとラミナの相互作用は、これらの分離した相から従来型の核構造を構築するのに必要であることが示唆される。

