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進化学:利己的な性染色体の配偶相手の選り好み

Nature 570, 7761 doi: 10.1038/s41586-019-1271-7

雌は交配において雄の有害な形質を好む場合があるが、こうした選り好みの進化は性選択における重大なパラドックスの1つである。このパラドックスを説明する2つの有力な仮説には、雌の好みと雄の形質との間の遺伝的相関に基づくフィッシャーのランナウェイ過程と、雌に好まれる雄の形質は雄の質を示すコストの伴う正直な信号であるとするザハヴィのハンディキャップの原理がある。しかし、これらの仮説ではいずれも、雄の有害な形質の進化が可能になる前に、最初に雌の選り好みが外因的に広まる必要がある。本論文では、雄の有害な形質に対する雌の選り好みの進化の機構が、性染色体の利己的な進化上の利益に基づいていることを示す。雌に偏った遺伝的要素(性染色体のW染色体やX染色体)は、雄の適応度やその子孫が雄であった場合にその適応度を低下させるが子孫が雌の場合にその適応度を上昇させるような形質を持つ雄に対して選り好みを進化させることが明らかになった。特に、W染色体に連鎖する雌の選り好みは、ほぼ致死的な雄の形質を固定へと押しやる。性染色体に連鎖した選り好みは、装飾というハンディキャップや雄による子の世話といった形質の進化の原動力になり得る。また、異なる性決定機構を持つ複数のタクソンにまたがる装飾や行動の多様性も、こうした性染色体に連鎖した選り好みで説明できる。

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