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気候変動生態学:全球的な変化に駆動される、現代のプランクトン群集の産業革命以前の状態からの離脱

Nature 570, 7761 doi: 10.1038/s41586-019-1230-3

地球最大の生態系である海洋では、人為起源の気候変動の影響が次第に強まっている。海洋生態系では、種の生物季節学的特性、生息域の範囲、群集の組成に、全球的に一貫した大きな変化が見いだされている。しかし、進行中の変化を裏付ける証拠があるにもかかわらず、海洋生態系が、自然に見られる10〜100年規模の変動性を超えて人新世の状態に突入したかどうかは、いまだ不明である。これは、観測時系列の大半が長期的な基準値を欠き、産業革命以前の時代までさかのぼる少数の時系列は空間的範囲が制限されているためである。今回我々は、普遍的に存在する海洋の動物プランクトンである浮遊性有孔虫類の堆積記録が有する特別な潜在的可能性を用いて、現代の種の群集組成に対する産業革命以前の全球基準値を得た。我々は、産業革命以前の年代の海底由来の浮遊性有孔虫類群集3774標本からなる全球データを用いて、これらを1978年以降のプランクトンフラックスを採集したセディメントトラップ時系列(観測地点:33か所、観測期間:87年)に由来する群集と比較した。その結果、人新世の群集は産業革命以前のものとは異なり、その変化は過去の温度変化に比例することが分かった。観測データの85%において、より温暖またはより寒冷な組成へと向かう群集の変化は過去の温度変化と一致していた。これらの観測結果は、過去の海洋動物プランクトン群集の変化に関する既存の証拠を裏付けるだけでなく、全球に分布する動物プランクトン類の人新世の群集が、擾乱を受けていない産業革命以前の状態とは体系的に異なっていることを明らかにしている。

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