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神経科学:アルツハイマー病の単一細胞トランスクリプトーム解析
Nature 570, 7761 doi: 10.1038/s41586-019-1195-2
アルツハイマー病は広く見られる神経変性疾患であるが、その分子的複雑性については、まだあまり分かっていない。今回我々は、病状の程度がさまざまなアルツハイマー病患者48人の前頭前野から得た、8万660の単一核トランスクリプトームを解析した。6つの主要な脳細胞タイプ全体で、病理に関連するもの、ミエリン化や炎症、ニューロンの生存の調節因子によって特徴付けられるものなど、転写的に異なる亜集団が特定された。疾患に関連する最も強い変化は、病理学的進行の初期に現れ、高度に細胞タイプ特異的だったが、後期に発現が上昇する遺伝子は全細胞タイプに共通しており、主に全体的なストレス応答に関与していた。重要なことに、疾患に関連する亜集団では女性の細胞が不釣り合いに多く見られ、オリゴデンドロサイトなどのいくつかの細胞タイプでは、転写応答に大きな性差があることが分かった。全体として、複数の細胞タイプでミエリン化関連過程の乱れが頻繁に起きており、ミエリン化がアルツハイマー病の病態生理に重要な役割を担っていることが示唆された。我々の単一細胞トランスクリプトーム情報資源は、アルツハイマー病の分子的・細胞的基盤探求のための青写真を提供する。

