ナノスケール材料:カイラルな、ねじれたファンデルワールスナノワイヤー
Nature 570, 7761 doi: 10.1038/s41586-019-1147-x
隣接する層の間に小さな不整合(「層間ねじれ」)があるファンデルワールスヘテロ構造は、層間モアレパターンに生じる原子格子ポテンシャルと長距離超格子ポテンシャルの両方によって決まる電子構造と相関現象(超伝導など)を有するため、興味深い。これまで、そうしたねじれたヘテロ構造は、剥離によって分離され、望ましい相対配向でマイクロメカニカルに積層した層の間に単一平面の界面を含んでいた。本論文では、調整可能な層間ねじれが合成中に自然に発達する、層状結晶のファンデルワールスナノワイヤーという材料群の開発について報告する。蒸気–液体–固体成長において、異方性層状半導体である硫化ゲルマニウム(II)のナノワイヤーは、ワイヤー軸に沿って層状に結晶化し、軸らせん転位を形成する強い傾向を持つ。ナノメートル分解能で解像した電子線回折から、軸転位の応力場に起因する円筒形固体端のトルクに誘起されるEshelbyねじれによって、このファンデルワールスナノワイヤーにカイラル構造が生じることが示された。面内の硫化ゲルマニウム結晶軸はワイヤーに沿って徐々に回転し、らせんにおいて隣接する硫化ゲルマニウム層は、層間ねじれによって自然にモアレパターンを形成する。この軸回転とねじれは、ナノワイヤーの太さを変えることで調節できる。電子線回折とカソードルミネッセンス分光法の組み合わせからは、ナノワイヤーに沿った格子方位と層間モアレレジストリーの連続的な変化に起因して局所的に励起される発光と層間ねじれの間に相関があることが示された。今回の知見は、平面界面ではなく、ナノワイヤーのらせん経路に沿って層間モアレパターンが実現される、ねじれ角の定まったファンデルワールス構造のスケーラブルな作製への一歩を示している。

