構造生物学:dsRNAウイルス中の高度に凝縮された核酸に見られる複数の液晶配置
Nature 570, 7760 doi: 10.1038/s41586-019-1229-9
成熟したウイルス粒子中のゲノムの特性を調べることは、ウイルスの組み立てや感染という高度に動的な過程の理解に極めて重要である。DNAとRNAでは細胞内運命が異なることから、二本鎖(ds)DNAウイルスとdsRNAウイルスの生活環は似ていない。核酸のパッキングに関しては、ゲノムが分節化されず、キャプシド内転写装置もないdsDNAウイルスでは、一巻きにまとめられたゲノムが多く見られる。dsRNAウイルスでは、細胞質へ放出されたdsRNAが宿主の防御機構を発動させるので、そのゲノムはRNAの複製や転写に必要な酵素を含むコア粒子中に保持されている。dsRNAウイルスのゲノムは、分節化の程度に大きな違いがある。レオウイルス科(Reoviridae)に属するウイルスのゲノムは、10〜12に分節化されていて、RNA依存性RNAポリメラーゼによって形成された一巻き型ではない配置が見られる。しかし、この配置がdsRNAウイルスの一般的な特徴かどうかはまだ明らかになっていない。今回我々はクライオ(極低温)電子顕微鏡法を用いて、シストウイルス科(Cystoviridae)に属するバクテリオファージΦ6の、3つに分節化されたdsRNAゲノムの構造を解き、dsRNAウイルスがdsDNA様の一巻き型のゲノム編成をとり得ることを明らかにした。このグループのウイルスでは、RNA依存性RNAポリメラーゼがゲノムの配列化を誘導せず、dsRNAは複数のコンホメーションをとれることが分かった。我々は、ゲノムの90%を包含するモデルを構築し、これを用いて、パッキング密度の変動を定量化し、密に凝縮された核酸によって示される多様な液晶配置の特性を明らかにした。我々の結果は、dsDNAのパッキングのカノニカルなモデルがdsRNAウイルスにも拡張できることを実証している。

