Letter
がん:プロテオミクスから、NNMTががん関連繊維芽細胞のマスター代謝調節因子であることが明らかになった
Nature 569, 7758 doi: 10.1038/s41586-019-1173-8
高悪性度の漿液性がんは予後が不良であり、その主な原因は、早い段階で起こる腹腔全体への播種である。ゲノムとプロテオミクスを用いた手法で、卵巣がんプロテオゲノミクスのスナップショットが得られているものの、卵巣がんの転移を理解する上では、腫瘍と間質の両区画を体系的に調べることが非常に重要である。今回我々は、非標識プロテオミクスワークフローを開発し、それぞれの区画から顕微解剖により回収して、ホルマリン固定後パラフィン包埋した5000個という少ない細胞を解析した。in situ病変から転移性腫瘍へとプログレッションする間、腫瘍のプロテオームは安定していたが、転移関連間質では高度に保存されたプロテオミクスシグネチャーが明らかになった。その主なものはニコチンアミド N-メチルトランスフェラーゼ(NNMT)やNNMTが調節する複数のタンパク質である。間質でのNNMTの発現は、がん関連繊維芽細胞(CAF)マーカーの発現や、サイトカインや発がん性細胞外マトリックスの分泌といった、CAF表現型の機能的特性に必要かつ十分であった。間質でのNNMTの発現は、卵巣がんの移動および増殖、in vivoでの増大および転移を支えた。CAFでのNNMTの発現は、S-アデノシルメチオニンの枯渇と、腫瘍間質における広範な遺伝子発現変化に関連するヒストンメチル化の減少を引き起こした。本研究は、超微量試料プロテオミクスを使用して、疾患表現型のドライバー候補を特定できることを裏付けている。NNMTは、間質中でのCAFの分化とがんプログレッションの中心的な代謝調節因子の1つであり、治療標的となる可能性がある。

