Letter

物理化学:低温での氷の圧縮時における非晶形の不在

Nature 569, 7757 doi: 10.1038/s41586-019-1204-5

非晶質の水氷には少なくとも3つの異なる構造形態が存在し、その全てで長距離結晶秩序を欠く。高密度非晶質氷(HDA)は、氷Iを130 K以下の温度で11 kbarに圧縮することによって初めて形成された。その過程は熱力学的な融解とされ、HDAはガラス状態の水であることが暗示された。この概念と、HDAを低密度非晶質氷へと可逆的に変換できることがきっかけとなって、非晶質相と深過冷却領域(228 K以下)の2種類の液体水を関連付けて水の多くの異常性(密度や熱容量の異常性など)を説明する2液体水モデル(two-liquid water model)が生まれた。しかし、HDAの形成は、構造崩壊を引き起こす機械的不安定性に起因すると見なされたり、再結晶化が起こり得ないほど遅い速度論的動態と関連付けられたりもしている。この解釈は、シミュレーション、構造が似た系との類似性、氷圧縮時の格子振動軟化の観察によって裏付けられている。また、より高温(速度論的動態がより速い145~200 Kの「ノーマンズランド(no man’s land)」領域)で氷の圧縮によって結晶相が生じるという最近の観察結果とも一致している。今回我々は、速度論的動態の役割をさらに精査し、氷Iの圧縮をゆっくり行えば、100 K(通常はHDAが形成される領域)でもプロトン秩序化しているが相互貫入構造をとらない氷IX′が生じ、次にプロトン秩序化した相互貫入構造の氷XV′、最後に氷VIII′が生成されることを示す。これに対して、高速で圧縮すると、氷IXではなくHDAが生じ、氷Iから氷XV′への直接変換が構造的に阻害される。この観察結果は、HDAの形成は、低密度氷Iと高密度氷XV′の間の変換が速度論的に阻止された結果であることを示唆しており、非晶質氷と過冷却液体水を関連付ける理論に疑問を投げ掛けている。

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