大気科学:大気観測に基づく中国東部からのCFC-11排出量の増大
Nature 569, 7757 doi: 10.1038/s41586-019-1193-4
成層圏のオゾン層の回復は、クロロフルオロカーボンなどのオゾン層破壊物質の大気中濃度の継続的な減少によるところが大きい。クロロフルオロカーボンのうち2番目に存在量が多いトリクロロフルオロメタン(CFC-11)の大気中濃度は、1990年代中盤以降に著しく低下した。しかし、2012年以降CFC-11の大気中濃度の低下が鈍化していることが近年報告され、全球の排出量の増大が示唆されている。同時期の東アジアからのCFC-11排出量の増大は、全球の排出量の増大に寄与しているが、排出源の位置と規模は分かっていない。本論文では、韓国のGosanと日本の波照間で得られた高頻度の大気観測の結果を、全球のモニタリングデータと大気化学輸送モデルのシミュレーションと共に用いて、東アジアからの地域的なCFC-11の排出量を調べた。我々は、2014~2017年の中国本土東部からの排出量が、2008~2012年の排出量よりも年間7.0 ± 3.0(±1標準偏差)ギガグラム多く、排出量の増大は中国北東部の山東省と河北省で主に生じていることを示す。この増大は、全球のCFC-11排出量の増大のかなりの割合(少なくとも40~60%)を占めている。地域的な排出量の特定が可能なデータの存在する東アジアの他の国や世界の他の地域においては、CFC-11排出量の著しい増大を示す証拠は見いだされていない。全球のCFC-11排出量増大の残りの部分をもたらした地域の特定には、排出している可能性のある地域の近くでは十分な頻度での長期間測定があまり行われていないため限界がある。いくつかの検討によって、中国本土東部からのCFC-11排出量の増大は新たな生産と利用の結果である可能性が示唆されているが、これは全球のクロロフルオロカーボンの製造を2010年までに段階的に停止することを定めたモントリオール議定書の合意に相反するものである。

