Letter
気候科学:工業時代における亜寒帯大西洋の生産力の低下
Nature 569, 7757 doi: 10.1038/s41586-019-1181-8
海洋の植物プランクトンは、海洋性食物網、漁獲量、大気中二酸化炭素の全球的減少の調節において極めて重要な役割を担っている。しかし、21世紀に入り衛星による監視が行われるようになる前の測定値が不足しているため、プランクトン資源の気候強制に対する長期的応答は明らかにされていない。今回我々は、亜寒帯大西洋の海洋生産力に関する複数世紀にわたる連続的な記録を用いて、この非常に生産力の高い海域全体の純一次生産力が過去2世紀の間に10 ± 7%と著しく低下したことを示す。この結論は、プランクトン由来のエアロゾルであるメタンスルホン酸のシグナルを用いて確立された、海洋生産力の代理指標を適用することで裏付けられた。メタンスルホン酸は、グリーンランドの一連の氷床コアに広く認められる物質である。同時期の衛星時代の観測値を用いることにより、このシグナルの使用が、空間的に統合された海洋生産力における過去の変動に関してロバストかつ高分解能の代理指標となることが示された。亜寒帯大西洋における生産力の低下の開始は、北極表面の温暖化の開始とほぼ同時期であり、生産力は過去数十年において、局所的な海面温度および亜寒帯大西洋全域での循環の強度と強く共変動してきたことが明らかになった。まとめると今回の結果は、工業時代の海洋生産力の低下が、大西洋の南北方向の鉛直循環(AMOC)の減衰に対する応答として予測されていた、北大西洋でのプランクトン資源の崩壊を示す証拠である可能性を示唆している。AMOCは21世紀において引き続き減衰すると予想されており、従って、全球に関連するこの海域全体の生産力はさらに低下する可能性がある。

