発生生物学:シーラカンスの神経頭蓋の発生と肉鰭類の頭部の進化
Nature 569, 7757 doi: 10.1038/s41586-019-1117-3
肉鰭魚類の神経頭蓋は、最初は頭蓋内関節によって前方の篩蝶形骨(ethmosphenoid)と後方の耳後頭骨(otoccipital)とに分かれていたが、その後全体的な構造の大幅な変化を経て前後の骨が融合し、肺魚類および初期の四肢類に見られるような単一の構造を生じた。これらの変化のパターンは十分に立証されているが、肉鰭魚類の進化の過程で神経頭蓋の形態や関連する軟組織に見られる多様性の基盤となる発生機構については、ほとんど明らかにされていない。ラティメリア属(Latimeria)のシーラカンスは、頭蓋内関節を保持していることが知られている唯一の現生脊椎動物である。この卵胎生魚類の神経頭蓋は、神経頭蓋の進化を理解する上で重要であるにもかかわらず、その発生については今なお不明である。今回我々は、ラティメリアの一種であるLatimeria chalumnaeの広範な成長過程に関して、従来のX線マイクロコンピューター断層(CT)撮影法、シンクロトロンX線マイクロCT法、磁気共鳴画像法を用い、神経頭蓋と脳の個体発生を調べた。その結果、ラティメリア属に関して知られる最初期の発生段階の神経頭蓋の特徴と、個体発生の過程で神経頭蓋に起こる主要な変化が明らかになった。神経頭蓋の変化は、脳の相対的サイズの極度の縮小および脊索の拡大を伴っていた。脊索発生は、周囲の頭蓋要素に大きな影響を与えると見られ、これが頭蓋内関節の形成を支えている可能性がある。今回の結果は、ラティメリア属の発生過程における神経頭蓋と隣接軟組織の間の相互作用に光を当てるとともに、肉鰭魚類に見られる神経頭蓋の多様性の進化の根底にあると考えられる発生機構について手掛かりを与えるものである。

