がん:転移性乳がんのゲノム特性解析
Nature 569, 7757 doi: 10.1038/s41586-019-1056-z
転移は、乳がん患者の主要な死因である。多くの研究で、初期段階の乳がんにおけるゲノム全体像の特性が明らかにされてきた。しかし、ゲノム変化は初期から後期段階へとがんが進化する際に獲得され、初期のがんゲノム全体像は、致死性のがんゲノム全体像を表してはいないことを示すさまざまな証拠がある。今回我々は、617例の転移性乳がんにおいて、体細胞変化の全体像について調べた。がんゲノムアトラスの初期乳がんと比較すると、ホルモン受容体を発現する(エストロゲンおよび/あるいはプロゲステロン受容体;HR+)がHER2のレベルは高くない(HER2−;n = 381)転移性乳がんでは、9つのドライバー遺伝子(TP53、ESR1、GATA3、KMT2C、NCOR1、AKT1、NF1、RIC8A、RB1)が、より高頻度に変異していた。さらに、HR+/HER2−の転移性乳がんでは、18のアンプリコンがより高頻度に見られた。これらのがんは、変異シグネチャーS2、S3、S10、S13、S17の増加を示した。HR+/HER2−転移性乳がんで増加していた遺伝子変化のうち、TP53、RB1、NF1の変異は、S10、S13、S17と共に転帰不良と関連があった。転移性のトリプルネガティブ乳がんは、初期のトリプルネガティブ乳がんと比較して、相同組換えDNA修復に関連する遺伝子での両対立遺伝子の機能喪失型体細胞変異の頻度が増加していた(2%に対して7%)。さらに、転移性乳がんは、初期乳がんと比べて変異量とクローン多様性が増加していた。従って、転移性乳がんのゲノム全体像には、臨床的に意味のあるゲノム変化が数多く存在しており、初期乳がんよりも複雑性が増している。転帰不良と関連するゲノム変化の特定により、まだ臨床試験段階の治療法を使う必要のある患者を、より早期により的確に選択できるようになるだろう。進行した乳がんに見られる遺伝的複雑性は、疾病経過のできるだけ早い時期に、そうした治療法を導入するべきであることを示唆している。

