光物理学:超高速全コヒーレント・スピンスイッチングの時間とスペクトルの指紋
Nature 569, 7756 doi: 10.1038/s41586-019-1174-7
将来の情報技術では、かつてない速さの低損失量子制御が要求される。強い光場によって、新しい物質状態の誘導、電子のバリスティックな加速、バレー擬スピンのコヒーレントな反転を含め、この方向に向かういくつもの成果が促進されてきた。こうしたダイナミクスは、特徴的なバンドギャップや高次高調波放射などの独特な「指紋」を残す。技術的に最も重要な量子特性であるスピンを、ポテンシャル障壁によって分離された2つの状態間でスイッチングする最も速くかつ最も散逸の少ない方法は、全コヒーレントな歳差運動を生じさせることである。ピコ秒の電場や磁場による実験研究や理論研究から、この可能性が示唆されているが、実際のスピンダイナミクスの観察にはまだ手が届いていない。今回我々は、テラヘルツ電磁パルスによって、ポテンシャル障壁を越えるスピンのコヒーレント操作が可能になることを示し、対応する時間的指紋とスペクトル指紋を報告する。この目標は、反強磁性体TmFeO3(ツリウムオルソフェライト)のスピンと、この実験に合わせて作製したアンテナの局所的に増強されたテラヘルツ電場を結合することによって実現された。強いテラヘルツパルスによって、1ピコ秒の継続時間内に、磁気異方性が急激に変化し、振幅の大きなバリスティックスピン運動が生じた。独特な位相の反転、集団的なスピン歳差運動の非対称分裂、ファラデー信号の長寿命オフセットは、隣接するポテンシャル極小へのコヒーレントなスピンスイッチングを示す特徴であり、数値シミュレーションと一致する。このスイッチング可能なスピン状態は、外部磁気バイアスによって選択できる。散逸が小さく、アンテナがサブ波長で空間的に定義されるため、テラヘルツ速度で動作するスケーラブルなスピンデバイスの実現が促進される可能性がある。

