生物工学:CRISPR誘導型のDNA塩基エディターによって誘導されるトランスクリプトーム規模のオフターゲットRNA編集
Nature 569, 7756 doi: 10.1038/s41586-019-1161-z
CRISPR–Cas塩基エディター技術は、標的とするヌクレオチドを変化させることができるので、研究や将来的な治療応用を目指してますます使用されるようになっている。最も広く使用されているシトシン塩基エディター(CBE)は、ラットAPOBEC1酵素を用いてDNAのシトシンの脱アミノ反応を誘導するもので、Casタンパク質–ガイドRNA複合体と連結させることで標的化を行う。CBEの特異性についてのこれまでの研究で、哺乳類細胞ではDNAのオフターゲット編集が起こることが確認されている。今回我々は、ヒト細胞において、ラットAPOBEC1を用いたCBEが、トランスクリプトーム規模で広範囲にわたりRNAのシトシンの脱アミノ反応を引き起こすことがあり、発現遺伝子の38〜58%において0.07〜100%の範囲の頻度で、数万か所のCからUへの編集を誘導することを示す。CBEが誘導するRNA編集は、タンパク質をコードする配列とコードしない配列のどちらでも起こり、ミスセンス変異やナンセンス変異、スプライス部位の変異、5′非翻訳領域と3′非翻訳領域の変異を生じた。我々は、ラットAPOBEC1に変異を持たせた2つのCBEバリアントを設計し、ヒト細胞におけるRNA編集の数を大幅に減少させた(390分の1以下および3800分の1以下)。これらのバリアントは、DNAのオンターゲット編集についても野生型CBEより正確であり、検討した大部分のガイドRNAについて、編集効率の大幅な低下は見られなかった。我々はさらに、アデニン塩基エディターもトランスクリプトーム規模のRNA編集を誘導し得ることを示す。これらの結果は、研究と臨床の両方の状況における塩基エディターの使用に影響を与えるものであり、RNA編集活性を低下させた改良型バリアント設計の実現可能性を示しており、また、塩基エディターのプラットフォームにおいて脱アミノ酵素のRNAに対するオフターゲット効果をより完全に解明および特徴付ける必要があることを示唆している。

