Letter
物性物理学:モット・ナノデバイスにおける閾値以下での発火
Nature 569, 7756 doi: 10.1038/s41586-019-1159-6
抵抗スイッチングは、電場印加によってデバイスの抵抗を変えることのできる現象であり、ニューロモルフィック・コンピューティングや抵抗変化型メモリーなどの新技術の中核をなしている。さまざまなタイプの抵抗スイッチングの中で、閾値発火は、人工スパイク発火ニューロンの実装を可能にし得るため、最も有望なものの1つである。閾値発火は、絶縁体から金属への転移を特徴とするモット絶縁体において観測される。この転移は外部電圧印加によって誘起され、閾値電圧を超えるとこの物質が伝導状態になる(「発火する」)。この誘起転移のダイナミクスは十分研究されており、その基本的機構や特性時間は十分裏付けられている。それに対し、逆の転移、すなわち電圧除去後に系が絶縁状態に戻る過程については、ほとんど分かっていない。今回我々は、モット・ナノデバイスは、絶縁抵抗の回復から長時間が経過した後も、以前の抵抗スイッチング事象の記憶を保持することを示す。このデバイスは、50~150ナノ秒以内に絶縁状態に戻るが、閾値以下の電圧を用いることによって、はるかに長い時間(最長で数ミリ秒)にわたって絶縁体から金属への転移を再度誘起できることが実証された。また、一次相転移に固有の準安定性がこの現象の起源であり、そのためこの現象は全てのモット絶縁体に存在する可能性があることが見いだされた。この効果は、モット・デバイスにおいて新しいタイプの揮発性メモリーをもたらし、抵抗変化型メモリー、ソリッドステート周波数弁別器、ニューロモルフィック回路に応用できる可能性がある。

