がん:CD8+ T細胞はがん免疫療法の間に腫瘍のフェロトーシスを調節する
Nature 569, 7755 doi: 10.1038/s41586-019-1170-y
がん免疫療法は、腫瘍微小環境内のCD8+ T細胞のエフェクター機能を回復もしくは増強させる。がん免疫療法によって活性化されたCD8+ T細胞は、主にパーフォリン–グランザイム経路およびFas–Fasリガンド経路を介した細胞死を誘導して腫瘍を除去する。フェロトーシスは、アポトーシスとは異なる細胞死の一形態であり、鉄依存的な過酸化脂質の蓄積によって起こる。in vitroでの研究ではあるが、さまざまな病理学的状況においてフェロトーシスの関与を示唆する証拠が出てきている。しかし、T細胞免疫やがん免疫療法におけるフェロトーシスの関与の有無や仕組みについては明らかになっていない。今回我々は、免疫療法によって活性化されたCD8+ T細胞が、腫瘍細胞でフェロトーシス特異的な脂質過酸化を増強し、フェロトーシスの増加が免疫療法の抗腫瘍効果に寄与することを示す。機構としては、CD8+ T細胞から放出されたインターフェロンガンマ(IFNγ)が、グルタミン酸–シスチン対向輸送体であるシステムxc−の2つのサブユニットであるSLC3A2とSLC7A11の発現を低下させ、腫瘍細胞によるシスチンの取り込みを障害し、結果として、腫瘍細胞の脂質過酸化とフェロトーシスを促進させた。マウスモデルにおいて、チェックポイント阻害と同時に、シスチナーゼ/システイナーゼ(シスチンとシステインの両方を分解する改変型酵素)によりシスチンやシステインを欠乏させると、T細胞を介した抗腫瘍免疫が相乗的に増強され、腫瘍細胞でフェロトーシスが誘導された。がん患者におけるシステムxc−の発現は、CD8+ T細胞のシグネチャー、IFNγの発現、患者の転帰と負の関連を示した。ニボルマブ治療前と治療中のヒトトランスクリプトーム解析からは、臨床的有用性がSLC3A2の発現低下および、IFNγとCD8の発現増加と相関することが分かった。従って、T細胞が促進する腫瘍フェロトーシスは抗腫瘍機構であり、チェックポイント阻害と組み合わせてこの経路を標的とすることが、治療法として有望である。

