分子生物学:シロイヌナズナのFLL2がポリアデニル化複合体の液–液相分離を促進する
Nature 569, 7755 doi: 10.1038/s41586-019-1165-8
細胞の生化学の重要な要素の1つは、膜に囲まれていない細胞区画におけるタンパク質や核酸の濃度である。これらの生体分子濃縮物の形成過程には、液–液相分離が関わっている。液–液相分離に必要な多価相互作用はin vitroでは幅広く研究されてきたが、この過程のin vivoでの調節については、ほとんど解明されていない。今回我々は、シロイヌナズナ(Arabidopsis)のRNA結合タンパク質FCAの機能に必要な因子を標的とした遺伝学的スクリーニングによって、液–液相分離のin vivoでの調節因子を特定した。FCAには、in vitroで相分離するプリオン様ドメインが含まれ、in vivoでも相分離と符合する挙動をとる。変異体のスクリーニングから、FCAの核内小体の形成には、コイルドコイルタンパク質であるFLL2の機能が必要であることが判明した。FCAは、シロイヌナズナゲノムにおいて多くの部位で近位ポリアデニル化を促進することにより、転写の読み飛ばしを減少させる。FLL2は、この近位ポリアデニル化の促進に必要だが、FCAの標的RNAへの結合には必要でなかった。FLL2を異所的に発現させると、FCA核内小体のサイズと数が増加した。ホルムアルデヒドでの架橋により、FLL2、FCA、RNA3′末端プロセシング装置のポリメラーゼモジュールとヌクレアーゼモジュールの間に生じるin vivo相互作用が捕捉された。これらの3′RNAプロセシング成分がin vivoで核内小体中のFCAと共局在したことから、FCA核内小体が3′末端プロセシング因子を区画化して、特定の部位でのポリアデニル化を促進することが示唆される。今回の知見により、コイルドコイルタンパク質が液–液相分離を推進できることが明らかになり、液体のように振る舞う小体のin vivoでの動態を統御する原理についての理解が深まった。

