発生生物学:再生中の腸の単一細胞トランスクリプトームから明らかになった復活幹細胞
Nature 569, 7754 doi: 10.1038/s41586-019-1154-y
腸上皮細胞の代謝回転は、陰窩底部に位置する多能性のLGR5+陰窩基底部円柱細胞(CBC)によって進行する。放射線照射などの損傷を受けるとCBCは失われるが、それでも腸上皮は元通りに回復することができる。これまでに、静止状態にある「+4」細胞(別名、予備幹細胞;RSC)という第2の細胞集団があり、損傷した腸を再生するとの説が出されている。CBCとRSCは互いに排他的だと考えられていたが、その後の研究で、LGR5+ CBCがRSCマーカーを発現しており、損傷後の腸の修復にはRSCはなくても構わないが、LGR5+細胞は不可欠であることが分かった。さらに、腸吸収上皮細胞や分泌細胞の前駆細胞、細胞周期の遅いLGR5+細胞が再生に寄与することが明らかにされている一方で、腸の再生に重要な転写調節因子YAP1はLGR5+細胞の生存促進性表現型を誘導することが示されている。このように、腸の再生に不可欠なのが細胞の可塑性なのか独特な細胞集団なのかは、まだ分かっていない。今回我々は、単一細胞RNA塩基配列解読により、再生中のマウスの腸に対するプロファイリングを行い、損傷によって誘導される独特な静止状態の細胞タイプを見いだして、これを復活幹細胞(revival stem cell;revSC)と名付けた。revSCはクラスタリンの高発現を特徴とし、恒常性が維持されている条件下ではごく少数しか存在しないが、ある時間的階層では、LGR5+ CBCを含めた腸内の主な細胞タイプ全てが生じる。放射線照射による腸の損傷や、LGR5+ CBCを標的とした除去、デキストラン硫酸ナトリウムの投与を行った後、revSCはYAP1に依存して一時的に増加し、LGR5+ CBC区画を回復させた。revSCは、機能的な腸を再生するのに必要だった。今回の研究により、腸の損傷によって動員され、恒常性維持を行う幹細胞区画を復活させて腸上皮を再生する、独特な幹細胞が明らかになった。

