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構造生物学:セロトニン輸送体–イボガイン複合体から明らかになった阻害と輸送の機構

Nature 569, 7754 doi: 10.1038/s41586-019-1135-1

セロトニン輸送体(SERT)は、シナプス前ニューロンへのセロトニン回収(ナトリウムと塩素イオンに依存して行われる)により神経伝達物質の恒常性を調節している。大うつ病性障害や不安障害の治療には、選択的セロトニン再取り込み阻害剤、つまり基質の結合を競合的に阻害し、それによって神経伝達物質の作用を延長する小分子化合物が使われている。ドーパミンやノルアドレナリンの輸送体は、SERTと共に、神経伝達物質ナトリウム共輸送体(NSS)ファミリーの一員である。NSSの輸送活性は、コカインやアンフェタミン類で阻害あるいは調節することが可能で、またNSSの遺伝的バリアントは、注意欠陥・多動性障害、自閉症、双極性障害などの複数の神経精神障害と関連付けられている。LeuTなどの細菌NSSホモログの研究から、輸送サイクル中に膜貫通ヘリックス(TM)がコンホメーションを変化させて中央の結合部位を膜の両側に交互にさらすという仕組みが示されている。しかし、NSSでの輸送と関連したコンホメーション変化はまだ知られていない。SERTでの輸送の際の構造を基盤とする機構を解明するために、我々は精神活性作用と抗嗜癖性を持つ幻覚誘発性の天然物であるイボガインとSERTとの複合体を調べた。イボガインは輸送の非競合的阻害剤だが、選択的セロトニン再取り込み阻害剤に対しては競合的結合が見られる。今回我々は、外向きに開いた状態、閉状態、内向きに開いた状態のコンホメーションにあるSERT–イボガイン複合体のクライオ(極低温)電子顕微鏡構造を報告する。イボガインは中央の結合部位に結合していて、細胞外ゲートの閉鎖は主にTM1bとTM6aの動きによっている。細胞内ゲートの開放には、TM1aのヒンジ様の動きとTM5の部分的巻き戻しが関わっていて、これらが一緒になって透過経路が形成され、細胞質への基質とイオンの拡散が可能になる。このような構造は、外向きに開いたコンホメーションから内向きに開いたコンホメーションへの変化の際に起こる構造再編成を明らかにしていて、神経伝達物質の輸送機構およびイボガインによる阻害の機構についての手掛かりが得られる。

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