化学生物学:末端アルキンを含むアミノ酸生合成経路の発見
Nature 567, 7748 doi: 10.1038/s41586-019-1020-y
生体系は、種類が著しく限られた化学官能基を使って、力学的基礎構造やシグナル伝達ネットワークから酵素触媒や情報記憶まで、広大な範囲にわたる細胞機能を生み出すことができる。この知見は、合成によって作られた小分子や材料で同じような機能を得る際に基盤として使われる官能基の種類の多さと比較した場合、特に顕著となる。生物反応性の官能基と化学合成反応性の官能基がそれぞれ作る空間の重なる部分が比較的小さいことが、バイオオルソゴナル化学が発展する基盤となっており、細胞内に対となる反応性官能基がないために、in situ反応を選択的に行うことが可能となっている。しかし、生物学的に「希少な」官能基、例えばフルオロ基、クロロ基、ブロモ基、ホスホン酸基、エンジイン基、シアノ基、ジアゾ基、アルケン基やアルキン基は、植物や菌類、微生物によって作られる天然物から続々と発見されている。このことからすると、バイオオルソゴナル反応用の試薬を生体内で内因的に生合成するシステムを遺伝的にコードする道が開ける可能性がある。特に、末端アルキンはCu(I)触媒によるアジド-アルキン環化付加という「クリック反応」を介して幅広い用途があることが知られている。今回我々は、放線菌の一種であるStreptomyces cattleyaで末端アルキンを含むアミノ酸が産生される珍しい経路を発見し、特性を調べたことを報告する。この経路ではL-リシンが、ハロゲン化、C–C結合の酸化的切断、アレン中間体と推定される物質を経ての三重結合形成など、予想外の反応経路をたどることが分かった。この経路を使えば、ハロゲンやアルケン、アルキンで標識されたタンパク質やグルコース由来の天然物などを細胞内でde novo合成し、その物質を出発点とするさまざまな反応に使用することが可能となるかもしれない。

