生物工学:雌マウスの生殖系列におけるCRISPR–Cas9を介した超メンデル遺伝
Nature 566, 7742 doi: 10.1038/s41586-019-0875-2
遺伝子ドライブは、ある遺伝子の2コピーのうち1コピーの伝達の方に偏らせることで、ランダムな分離よりもその片方の遺伝頻度を高める。最近、効率の高い遺伝子ドライブ系が昆虫で開発されていて、これらの系では、塩基配列を標的としたCRISPR–Cas9のDNA切断活性と内因性の相同組換え修復機構を利用して、ヘテロ接合性遺伝型をホモ接合性遺伝型に変換している。同様の系が実験用の齧歯類でも実行できるならば、複数のホモ接合性遺伝子が関与する現在実現困難な遺伝型を迅速に構築(例えば、ヒトの多遺伝子疾患をモデル化)できるようになる可能性がある。しかし、我々が知る限り、そのような系は哺乳類ではまだ実証されていない。今回我々は、マウスで、チロシナーゼ(Tyr)遺伝子に埋め混んだ、ガイドRNAをコードする活性のある遺伝的エレメントを用いることで、初期胚や発生中の生殖系列においてCRISPR–Cas9が活性を持つ場合に、標的遺伝子の変換が起こり得るかどうかを評価した。Cas9は初期胚や雄の生殖系列で効率的に二本鎖DNA切断を誘導したが、これらの切断は相同組換え修復で修復されなかった。対照的に、雌の生殖系列に限定したCas9発現が誘導した二本鎖切断は、相同組換え修復で修復された。この修復によって、供与側の染色体から受容側の染色体に活性のある遺伝的エレメントがコピーされ、このエレメントの次世代での遺伝率が上昇した。これらの結果は、マウスでCRISPR–Cas9によって任意の対立遺伝子の遺伝を偏らせる系を実行できることを実証しており、これは基礎研究および生物医学研究における齧歯類モデルの使用を大きく変える可能性がある。

