がん:脳脊髄液の液体生検によるグリオーマの腫瘍進化の追跡
Nature 565, 7741 doi: 10.1038/s41586-019-0882-3
びまん性のグリオーマ(神経膠腫)は、最も多く見られる成人の悪性脳腫瘍であり、グリオブラストーマ(神経膠芽腫)および世界保健機関(WHO)分類の悪性度IIとIIIの腫瘍(低悪性度グリオーマとも呼ばれる)を含む。遺伝学的な腫瘍プロファイリングが、疾患の分類や治療の指針に用いられているが、組織採取のためには脳外科的な処置が必要で、疾患の進行過程にわたって遺伝型を正確に判定するには、腫瘍生検を繰り返し行うことが必要な場合がある。原発性脳腫瘍患者の循環腫瘍DNA(ctDNA)の検出はまだ困難であるが、脳脊髄液(CSF)由来のctDNAの塩基配列解読が、リスクおよびコストの低い、グリオーマ遺伝型判定の代替手段となる可能性がある。そこで我々は、神経学的な兆候あるいは症状が見られたため腰椎穿刺を受けた85人のグリオーマ患者から得たCSF中に見られるグリオーマゲノムを評価した。本論文では、85人中42人(49.4%)のCSFから腫瘍由来DNAが検出され、疾患負荷や有害転帰との関連が見られたことを示す。CSF中のグリオーマゲノムの全体像は、幅広いスペクトラムの遺伝的変化を含んでいて、腫瘍生検のゲノムと酷似していた。染色体腕1pと19qの同時欠失(1p/19q同時欠失)や代謝遺伝子イソクエン酸デヒドロゲナーゼ1(IDH1)やIDH2の変異などの腫瘍発生の初期に起こる変化は、対応するctDNA陽性CSFと腫瘍の対全てで共通して見られたのに対し、増殖因子受容体シグナル伝達経路についてはかなりの進化が見られた。侵襲性を最小限にした技術でグリオーマゲノムの進化を監視できれば、最もアグレッシブなヒトがんの1つであるグリオーマの、遺伝型に基づく治療の臨床開発および使用の前進につながる可能性がある。

