気候科学:陸域の長期的な炭素取り込みに対する土壌水分の大きな影響
Nature 565, 7740 doi: 10.1038/s41586-018-0848-x
陸上生物圏は人為起源の二酸化炭素(CO2)の約25%を吸収しているが、陸域の炭素取り込みの速度はまだ極めて不確かであり、気候予測の不確かさにつながっている。従って、陸域の炭素貯蔵を制限したり促進したりする要因の解明は、気候予測の改善に重要である。土壌水分は、陸域の炭素取り込みを制限し得る要因の1つであり、生態系の水ストレスを通して総一次生産を減らし、植生の枯死の原因となるとともに、陸域–大気フィードバックに起因する極端な気候現象をさらに悪化させる可能性がある。これまでの研究では、過去の炭素フラックスの変動に対する利用可能な土壌水分量の影響が調べられている。しかし、土壌水分の変動性とその変化傾向が長期的な炭素シンクに及ぼす影響と、それに伴う炭素損失の原因となる機構はまだよく分かっていない。今回我々は、一連の実験で得られた4つの地球システムモデルのデータ出力を用いて、土壌水分の変化に対する陸域の純生物相生産の応答を解析し、21世紀を通して土壌水分の変動性とその変化傾向が大きなCO2フラックス(年間約2〜3ギガトンの炭素で、陸域の炭素シンクそのものに匹敵)を生み出すことを見いだした。土壌水分の季節内変動や年々変動によって、利用可能な土壌水分に対する光合成と正味の生態系交換の非線形的な応答と、陸域–大気相互作用に起因する気温上昇と飽差の増大の結果、CO2が生み出される。土壌水分の変動は、現在の陸域の炭素シンクを減少させ、いくつかの地域における変動の増大と乾燥傾向は炭素シンクをさらに減少させると予想される。今回の結果は、大陸が将来の炭素シンクとして働く能力は、土壌水分に対する炭素フラックスの非線形応答と、陸域–大気相互作用に極めて強く依存することを浮き彫りにしている。このことから、炭素取り込みの速度の増大傾向は、今世紀半ばを過ぎると持続しなくなり、その結果、大気中のCO2の増加が加速する可能性が示唆される。

