植物科学:Kokの光合成酸素時計における中間体構造
Nature 563, 7731 doi: 10.1038/s41586-018-0681-2
1969年、Joliotは光化学系II(PSII)で閃光により誘発した酸素発生に4周期振動が見られることを発見した。Kokはそれに着想を得てさらに実験を行い、光合成での酸素発生は5つの状態を経るという速度論モデルを提案し、これはKokのS状態モデルあるいはS状態サイクルと呼ばれている。このモデルを構成するのは4つの比較的安定な(準安定)中間体(S0、S1、S2、S3)と一過性のS4状態であり、酸素発生複合体中では、マンガン(Mn)4個がオキソ架橋されたマンガンカルシウム(Mn4CaO5)クラスターに結合した水由来の2個の酸素から、協奏反応で2原子酸素の形成が起こるが、これらの中間体はそれに先立って現れる。この反応は、PSIIのアクセプター側での可動性プラストキノンQBの2段階還元とプロトン付加に共役している。今回我々は、常温でのマルチフラッシュ可視光レーザー励起による連続フェムト秒X線結晶解析とX線発光分光の同時測定を行い、Kokサイクルの準安定な中間体全ての高分解能構造(2.04~2.08 Å)を明らかにした。さらに、S2状態 → S3状態への遷移間の150μsと400μs時点での過渡状態の構造2種類も報告し、もう1つの「水」であるOxの結合を含め、明白な構造変化があることを明らかにした。今回の結果は、カルシウムと結合した1個の水分子(W3)が、基質の移動に直接関わっていることを示唆している。S3状態でCaとMn1の間にもう1つの酸素Oxが結合していることは、O5が1つの基質として関わるというO–O結合形成機構(この時、Oxはもう1つの基質酸素となるか、もしくはO2の放出の際にO5の位置を補充するのに極めて適した位置を占めるかのどちらかである)の裏付けとなる。従って今回の結果は、S3状態におけるペルオキソ結合の形成はなく、W2に対するW3の求核攻撃の可能性は非常に低いことを示している。

