量子物理学:フェルミオン格子時計における多体相互作用の出現
Nature 563, 7731 doi: 10.1038/s41586-018-0661-6
アルカリ土類原子は、分単位の光学的寿命、高スピン原子核、SU(N)対称な相互作用のある準安定な「クロック」状態を有し、そのため、原子時計、量子情報処理、量子シミュレーションの強力なプラットフォームとなる。そうした原子の少数粒子系によって、系のサイズが大きくなるにつれて複雑な多体現象が出現するのを観測する機会が得られる。粒子間の多体相互作用は創発的な現象であり、基礎となる粒子対間の相互作用の総和へは分解できない。こうした相互作用を使って、量子物質のエキゾチックな状態を生成できる可能性があるが、極低温フェルミオンではまだ調べられていない。今回我々は、フェルミオンである87Sr原子の三次元格子を利用した光時計に、孤立した少数多体系の配列を生成した。分解能の高いクロック分光法を使うことで、原子間の弾性多体相互作用や非弾性多体相互作用の開始が直接観測された。我々は、格子サイト当たりの原子数nを1から5まで変化させて、クロック遷移の周波数偏移を測定し、弾性多体効果に特徴的な非線形相互作用の変化を観測した。理論と組み合わせると、これらの測定結果は、アルカリ土類のフェルミオン原子に特有のSU(N)対称な多体相互作用の出現を明らかにしている。我々は、非弾性多体効果を調べるため、こうした周波数偏移を使って、この格子中のn個が占有したサイトを分離し、対応するクロック状態の寿命を測定した。これによって、バルクの気体で遭遇する系統的な影響を受けずに、短距離の少数多体物理を調べることができた。孤立した少数多体系で測定された寿命は、原子間ポテンシャルに関する単純なモデルに基づく数値予測と非常によく一致しており、これは極低温衝突の普遍性を示唆している。トンネリングを通してこれらの少数多体系を結合すれば、相互作用のエネルギーと時間スケールが有利になり、今回の系を高スピンの量子磁性や近藤効果の研究に利用できるだろう。

