バイオメカニクス:砂漠に生息するヌーの優れた筋肉と優れたロコモーション
Nature 563, 7731 doi: 10.1038/s41586-018-0602-4
乾燥環境や砂漠環境に生息する大型哺乳類は、長距離を移動することによって降雨、食物、気候の季節的・地域的な変動に対処することができるが、そうした移動では途中で水や食物を確実に得られない場合が多い。このような長距離移動を行う動物個体の能力はエネルギー利用率に大きく依存し、すなわち、ロコモーション中の熱発生(移動コスト)に左右される。陸上での移動コストは、飛行の移動コストの7.5倍、遊泳の移動コストの20倍と、他の移動手段よりはるかに大きい。移動コストはサイズおよび四肢長が大きいほど小さくなるため、陸上移動動物は一般に大型で、効率的なロコモーションを行うのに特化した体を持つ。今回我々は、運動センサーおよび環境センサーを搭載した追跡用GPS首輪を用いて、ボツワナ北部の高温乾燥環境に生息するオグロヌー(Connochaetes taurinus;体重220 kg)が、水を飲まずに5日間にわたって最長80 km歩いたことを報告する。首輪を装着したオグロヌーは主に日中に移動し、若干の行動的体温調節は明らかだったものの、ロコモーションは温度および湿度には影響されないように見受けられた。我々は、オグロヌーと、オグロヌーに似ているが比較的定住性の反芻類である家畜ウシ(Bos taurus;体重760 kg)の前肢の尺側手根屈筋に由来する無損傷の筋生検検体において、周期的な収縮中の仕事生成のパワーおよび効率(機械的仕事および熱発生)を測定した。その結果、オグロヌーおよびウシの等尺性収縮のエネルギーコスト(活性化および力の発生)は、より小型の哺乳類で報告されている値と同等であった。オグロヌーの筋肉の効率(62.6%)は、はるかに大型であるウシの同じ筋肉の効率(41.8%)、また、より小型の哺乳類から得られている同種の測定値(マウスで34%、およびウサギで27%)を大きく上回った。我々は、無損傷の筋繊維で直接的なエネルギーの測定を行い、これを用いて、オグロヌーの筋肉の高い仕事効率が、高温乾燥条件下での長距離移動における体温調節の課題を最小にするのに貢献していることを示す。

