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量子物理学:ユニタリー性へクエンチしたボース気体の普遍的なプレサーマルダイナミクス

Nature 563, 7730 doi: 10.1038/s41586-018-0674-1

クォーク–グルーオンプラズマや中性子星など物質の強相関相、そしてとりわけ、そうした系のダイナミクス[例えばハミルトニアンのクエンチ(粒子間相互作用強度など、いくつかのハミルトニアンパラメーターを突然変化させること)後のダイナミクス]を理解することは、現代物理学の基本的な課題である。極低温原子気体は、粒子間相互作用を調整でき、固有の時間スケールを実験的に分解できるため、こうした問題の優れた量子シミュレーターとなる。特に、極低温気体によって、量子力学によって許容される最大強度の相互作用を生じるユニタリー領域が実現される。この領域は、フェルミ気体では広く研究されている。あまり調べられていないユニタリーボース気体からは、気体密度だけで制御される普遍的な物理学や新しい形態の超流動などの可能性が生まれる。今回我々は、運動量分解研究と時間分解研究を通して、ユニタリー性へクエンチした、縮退ボース気体と熱的な均一ボース気体を調べた。その結果、縮退した試料において、凝縮割合が普遍的に非ゼロのプレサーマル状態の出現と一致する、クエンチ後の普遍的なダイナミクスが観測された。熱的気体では、力学的特性と熱力学的特性は一般的に気体の密度と温度に依存するが、それらは依然として普遍的な無次元関数で表せることが見いだされた。意外にも、クエンチによって生じた全相関エネルギーは、気体温度に依存しないことが分かった。今回の測定結果から、ユニタリーボース気体の理論に関する定量的な基準と課題が得られた。

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