ナノスケールデバイス:結合した4つのスピントルクナノ発振素子による母音認識
Nature 563, 7730 doi: 10.1038/s41586-018-0632-y
近年、人工ニューラルネットワークが人工知能の主要アルゴリズムになっている。こうしたシステムでは、ニューロン活性化関数は静的であり、コンピューティングは標準的な四則演算によって実現される。対照的に、ニューロンに着想を得たコンピューティングの有力な一分野では、脳の動的性質が利用されており、ニューラルネットワークの各構成要素に動的機能(振動など)を与えることや、創発的物理現象(同期現象など)に基づいて小規模ネットワークで複雑な問題を解くことが提案されている。新しいナノ電子デバイスによって、生体ニューロンの周期的スパイク活性を模倣する省電力の小型非線形自励発振素子が得られるため、このアプローチをハードウエア実装によって実現することに関心が集まっている。発振素子間の動的結合は次に、ニューロン間のシナプスのように人工ニューロン間の情報伝達の媒介に使用できる。このような方法でナノデバイスを使用するための課題の1つは学習を実現することであり、それには、結合した発振素子を細かく制御し調整する必要がある。ナノデバイスはノイズやばらつきを伴う傾向があり、その動的特徴は制御が困難である。今回我々は、スピントロニクスナノ発振素子の優れた可変性(すなわち電流や磁場によって周波数を広範囲にわたって正確に制御できること)を用いて、この課題に対処できることを示す。我々は、リアルタイム自動学習則に従って周波数を調節することよって、4つのスピントルクナノ発振素子からなるハードウエアネットワークを訓練し、話声の母音を認識させることに成功した。実験での認識率の高さは、これらの発振素子の同期化能力に起因することが示された。今回の結果は、ハードウエアの小規模ニューラルネットワークに振動や同期化などの非線形動的特徴を与えることによって、非自明なパターン分類タスクを達成できることを実証している。

