生態学:生物多様性は生態系の安定性を向上・低下させる
Nature 563, 7729 doi: 10.1038/s41586-018-0627-8
種の多様性の喪失と獲得は、生態学的安定性や、生態系機能および生態系サービスの持続可能性に影響を及ぼす。実験およびモデルからは、時間的変動性、抵抗性、復元力など、安定性の個々の要素に対して多様性が好影響や悪影響を与えたり、全く影響を与えなかったりすることが示されている。これらの安定性要素がどのようにして共変するのかは、まだほとんど理解されていない。同様に、概念的には生態系の多機能性と同類である生態系の全体的な安定性に対して多様性が及ぼす影響についても、まだ分かっていない。今回我々は、690の微小生態系(ミクロコスム)で40日間にわたり19回のサンプリングで計1万2939のサンプルを得るという大規模な実験を行い、水生の繊毛虫類の群集において、時間的変動性、抵抗性、生態系の全体的な安定性がどのようにして多様性(すなわち種の豊かさ)に応答するのかを調べた。その結果、種の豊かさは時間的安定性を向上させたが温度上昇に対する抵抗性は低下させた。従って、2つの安定性要素は、多様性の勾配に沿って負の共変関係を示した。多様性が個々の安定性要素に対して負の影響を及ぼすことは一般に予測されているが、これまでの生物多様性操作研究でこうした負の共変関係が報告されたことはほとんどなかった。我々の知見を生態系の多機能性の概念と統合すると、生態系の全体的安定性に多様性が及ぼすこぶ型およびU字型の影響が明らかになった。つまり、生物多様性は、それが低いときには生態系の全体的安定性を向上させることがあるが、それが高いときにはこうした安定性を低下させることがあり、U字型の関係ではこれらが反対になる。生態系の多機能性に対する多様性の影響もまた、多様性が一部の機能には好影響を与え、他の機能には悪影響を及ぼす場合には、こぶ型またはU字型になると考えられる。生態系の多機能性の概念と生態系の安定性とを結び付けることは、多様性が生態系の安定性に及ぼす影響だと考えられるものを変え得るとともに、この科学的知見を政策関連の情報に変換するのに役立つ可能性がある。

