Letter

光物理学:天然のファンデルワールス結晶における超低損失の面内異方性ポラリトン

Nature 562, 7728 doi: 10.1038/s41586-018-0618-9

光と物質のハイブリッド励起であるポラリトンによって、光のナノスケール制御が可能になる。グラフェンや、弱いファンデルワールス力で結合した二次元層からなる物質(vdW物質)では、特に大きなポラリトン場閉じ込めと長い寿命が見いだされることがある。こうしたポラリトンは、電場や、物質の厚さによって調節できるため、ナノレーザー、調節可能な赤外検出器やテラヘルツ検出器、分子センサーなどの応用につながっている。面内異方的な構造特性や電子的特性に起因して、vdW物質の表面を異方的に伝搬するポラリトンが予測されている。そうした物質では、楕円型や双曲型の面内ポラリトン分散が予想されており(例えば、黒リンにおけるプラズモンポラリトン)、双曲型の場合、光学状態密度の増大や光線に似た方向性表面伝搬が生じ得る。しかしこれまでのところ、天然物質における異方性ポラリトン伝搬はまだ観測されていない。本論文では、天然vdW物質であるα-MoO3の表面における異方性ポラリトン伝搬について報告する。我々は、半導体α-MoO3の薄片と円板の赤外ナノ画像化とナノ分光法によって、面内分散が楕円型や双曲型で、波長がグラフェンのプラズモンポラリトンや窒化ホウ素のフォノンポラリトンに匹敵する(最短で、対応する光子波長の60分の1の)フォノンポラリトンを視覚化し確認した。また、実空間画像における信号振動からポラリトンの振幅寿命を測定し、室温におけるグラフェンのプラズモンポラリトンの振幅寿命の10倍以上である8ピコ秒という値を得た。この寿命は、同位体操作された窒化ホウ素のフォノンポラリトンや低温でのグラフェンのプラズモンポラリトンについてこれまで報告された最高値の約4倍でもある。vdW物質の超低損失の面内異方性ポラリトンを用いれば、バイオセンシングから量子ナノフォトニクスまでさまざまな応用分野において、方向性のある強い光–物質相互作用、ナノスケールの方向性エネルギー移動、平面型集積光学素子が実現される可能性がある。

目次へ戻る

プライバシーマーク制度