進化学:痕跡器官の社会的調節がアリ類の複雑なワーカーのカースト制を生じさせる
Nature 562, 7728 doi: 10.1038/s41586-018-0613-1
アリ類が有する複雑なワーカーのカースト制の起源はダーウィンを当惑させ、今なお進化生物学および発生生物学における問題であり続けている。アリ類は約1億5000万年前に出現し、有翅の女王カーストと雄カースト、そして無翅のワーカーカーストからなるコロニーを形成する。高度に多様なオオズアリ(Pheidole)属では、無翅のワーカーカーストは、頭部が小型のマイナーワーカーと頭部が大型の兵隊(ソルジャー)という、形態の異なる2種類のサブカーストへと進化した。女王と雄の翅は、幼虫の翅成虫原基と呼ばれる細胞集団から発生する。マイナーワーカーおよびソルジャーは無翅だが、ソルジャーの発生過程では翅成虫原基の痕跡が一時的に出現する。こうした痕跡的形質は系統発生学的には広く見られ、主に共通の系統を示す証拠として用いられているが、その機能的重要性は明確になっていない。今回我々は、オオズアリ属で、痕跡的な翅原基の成長が、頭部と体のサイズ間のアロメトリー(相対成長に基づく非比例的成長関係)を調節して頭部が大型のソルジャーを生じるのに必要であることを示す。また、オオズアリ属のコロニーは、痕跡的な翅原基の成長を社会的に調節してワーカーのサブカースト決定を制御する能力を進化させており、これによってコロニーがマイナーワーカーとソルジャーの比率が維持されることも明らかになった。さらに、痕跡的な翅原基がアリ類全般で複雑なワーカーのカースト制の平行進化を促進させたことを示唆する比較および実験による証拠も得られた。より一般的には、こうした痕跡器官は発生過程において新たな調節機能を偶発的に獲得して、適応進化を促進させる可能性がある。

