物性物理学:励起子ポラリトン・トポロジカル絶縁体
Nature 562, 7728 doi: 10.1038/s41586-018-0601-5
バルクでは絶縁体だが表面には電子が流れるトポロジカル絶縁体は、トポロジカル不変量が、欠陥や乱れなどの摂動に対するロバスト性として現れる物質の顕著な例である。その最も際立った特徴は、トポロジカル特性が異なる領域間の境界部にエッジ状態が出現することである。観測可能な物理的効果は、このエッジ状態のロバストな一方向輸送である。トポロジカル絶縁体は最初、強磁場下で伝導度が量子化される整数量子ホール効果において観測され、その後、強いスピン–軌道相互作用などの他の効果によって磁場がなくても存在することが示唆され、実際に観測された。これらは全て相関電子の系であった。一方この10年で、トポロジカル物理学の概念は、マイクロ波、フォトニックシステム、低温原子、音響学はもとより、力学などの分野にも導入された。最近、磁場の影響下では、グラフェンのようなハニカム格子として組織化された励起子ポラリトン系において、トポロジカル絶縁体が実現可能であることが示唆された。励起子ポラリトンは、量子井戸励起子と共振器光子の強い結合によって現れる「半分は光で半分は物質」という準粒子である。従って、予測されるトポロジカル効果は、これまでに実証された全てのトポロジカル効果とは異なる。今回我々は、励起子ポラリトン・トポロジカル絶縁体を実験的に実証したことを報告する。結合した半導体マイクロ共振器の格子アレイをレーザーによって非共鳴励起し、磁場を印加すると、アレイのエッジの周りにポラリトン波束の一方向の流れが生じた。このカイラルエッジモードは、ポラリトン凝縮機構によって現れる。我々は、実空間およびフーリエ空間における走査画像化技術を用いてフォトルミネッセンスを測定することにより、伝搬するこのモードを視覚化した。また、このトポロジカルエッジモードは欠陥を迂回し、印加磁場を反転させることによってその伝搬方向を反転できることが実証された。今回の励起子ポラリトン・トポロジカル絶縁体は、光–物質相互作用や増幅、非線形多体系としての励起子ポラリトンの相互作用が関与するトポロジカル現象への道を開くものである。

