生態学:北方の植物生産力に対する春の温暖化による季節的な相殺効果の広がり
Nature 562, 7725 doi: 10.1038/s41586-018-0555-7
気候変動によって植物の生物季節のサイクルが変化するため、生態系の機能が変化して、気候システムへのフィードバックが生じる。北方(北緯30度以北)の生態系では、より温暖な春は一般的に、生育期の開始の早まりと春の初期における生態系生産力の増大につながる。現地(in situ)と地域的な研究からも、温暖な春は、その後の夏と秋における植物生産力に対して時間遅れの影響を及ぼすことを示す証拠が得られている。しかし、その方向性(好影響か悪影響か)や地理的分布など、時間遅れの影響についての理解は非常に限定的である。本論文では、1982〜2011年の期間の衛星観測、現地観測、モデルによるデータを解析し、北方生態系全域において、温暖な春への時間遅れを伴う生産力の応答が広範囲に見られ、その特徴が異なっていることを示す。観測データに基づき、4100万km2の研究面積の約15%で時間遅れの悪影響が、約5%で時間遅れの好影響が見られることが見いだされた。これとは対照的に、現在の陸域炭素循環モデルによる予測では、時間遅れの悪影響を示す面積の割合は、はるかに小さく(1〜14%)、時間遅れの好影響を示す面積の割合は、はるかに大きい(9〜54%)ことが分かった。我々は、時間遅れの影響の地理的分布と方向性の大半が、標高と降水の季節パターンによって決定されることを見いだした。春の温暖化に伴う時間遅れの影響について観測で絞り込まれた推定とモデルで絞り込まれた推定の間に見いだされた違いは、季節的な水ストレスの蓄積が季節的な植生の成長に及ぼす影響の考慮が、現在のモデルでは不十分であることで説明できる可能性がある。全体的に今回の結果は、北方の生態系は主に温度と太陽放射に制約されていると考えられるにもかかわらず、多くの北方生態系では、より温暖な春が生育期の生態系生産力に与える好影響は、季節的な水不足の積み重ねによって実質的に相殺されることを示唆している。

