がん:ヒトの神経膠芽腫はドライバー変異が低レベルの脳室下帯細胞から生じる
Nature 560, 7717 doi: 10.1038/s41586-018-0389-3
神経膠芽腫(GBM)は悪性で難治性の脳腫瘍であり、全生存期間の中央値は15か月である。GBMを駆動する変異を持つ起源細胞を特定できれば、がんプログレッションの理解や新たな治療法開発のための基礎となり得る。神経膠腫発生には体細胞変異の蓄積が関与していることから、成人の脳の脳室下帯(SVZ)に存在する自己再生能と増殖能を持つ神経幹細胞(NSC)が、GBMの起源となる細胞である可能性が複数の研究で示唆されてきた。しかし、GBM患者から得られた直接的な遺伝学的証拠はまだない。今回我々は、患者の脳組織とゲノム編集マウスモデルから得た直接的な分子遺伝学的証拠により、SVZ内のアストロサイト様NSCが、ヒトGBMのドライバー変異を含む起源細胞であることを示す。我々はまず、野生型イソクエン酸デヒドロゲナーゼ(IDH)のGBMや他のタイプの脳腫瘍の患者28人から得た、(i) 腫瘍塊から離れた所にある正常SVZ組織、(ii) 腫瘍組織、(iii) 正常な大脳皮質組織(あるいは血液)から構成される3種類の組織を1組として、高深度塩基配列解読を行った。野生型IDHのGBM患者の56.3%において腫瘍から離れた所にある正常SVZ組織に含まれるGBMドライバー変異は低レベルだったが(最低で変異量の約1%)、対応する腫瘍では高レベルで観察されることが分かった。さらに、患者脳組織とゲノム編集マウスモデルの単一細胞の塩基配列解読とマイクロダイセクション解析により、ドライバー変異を持つアストロサイト様NSCは、SVZから移動して、離れた脳領域で高悪性度の神経膠腫を発生させることが分かった。以上のことから、ヒトSVZ組織のNSCが、GBMのドライバー変異を持つ起源細胞であることが明らかになった。

