創薬:ヒストンアセチルトランスフェラーゼKAT6A/Bの阻害剤は、老化を引き起こして腫瘍の増殖を停止させる
Nature 560, 7717 doi: 10.1038/s41586-018-0387-5
リシンアセチルトランスフェラーゼ(KAT)によるヒストンのアセチル化は、クロマチンの構成や機能に不可欠な働きをする。MYSTファミリーのKAT(KAT5〜KAT8)をコードする遺伝子の中には、がん遺伝子のKAT6A(別名MOZ)とKAT6B(別名MORFあるいはQKF)が含まれている。KAT6Aは正常な造血幹細胞で重要な役割を担っており、頻発する染色体転座の標的部位であり、急性骨髄性白血病を引き起こす。KAT6Bの染色体転座も同様に、さまざまながんで見つかっている。KAT6Aは、CDKN2A座位の抑制因子を調節して細胞老化を抑制し、この調節機能にはKAT活性を必要とする。KAT6A対立遺伝子の片方が失われると、MYC誘導性リンパ腫を持つマウスでは、生存期間の中央値が105日から413日に延びる。これらの知見から、KAT6AやKAT6Bの阻害は、がん治療に有効である可能性が示唆される。今回我々は、KAT6AとKAT6Bに対する非常に強力で選択性の高い阻害剤WM-8014とWM-1119を報告する。生化学研究と構造研究によって、これらの化合物がアセチル補酵素Aの可逆的競合阻害剤で、MYSTが触媒するヒストンアセチル化を阻害することが明らかになった。WM-8014とWM-1119は、DNAに損傷を与えることなく、細胞周期からの離脱と細胞老化を引き起こす。細胞老化はINK4A/ARF依存的で、KAT6Aの機能が喪失したときによく見られる遺伝子発現の変化が起こる。WM-8014は、in vitroや肝細胞がんのゼブラフィッシュモデルにおいて、がん遺伝子誘導性の老化を促進する。WM-1119は生物学的利用能が高く、マウスにおいてリンパ腫のプログレッションを停止させる。このような阻害剤は、ヒストンアセチル化により調節される遺伝子転写を標的とした治療法の開発促進に役立つことが期待される。

