分子生物学:クライオ電子顕微鏡によって明らかになった、哺乳類ミトコンドリアでの翻訳開始に固有の特徴
Nature 560, 7717 doi: 10.1038/s41586-018-0373-y
ミトコンドリアは、自身の特化したタンパク質合成装置を維持していて、哺乳類では酸化的リン酸化を行う膜タンパク質の合成にもっぱら使われている。ミトコンドリアでのタンパク質合成の開始は、細菌や細胞質での翻訳系とは大きく異なっている。ミトコンドリアでの翻訳開始には、細菌から哺乳類までの他の全ての翻訳系に必須の開始因子1が欠けている。また、開始と伸張の両方に1種類のメチオニル転移RNA(tRNAMet)だけが用いられ、開始因子はホルミル化されたtRNAMet(fMet–tRNAMet)を特異的に識別しなくてはならない。そして、ほとんどのミトコンドリアmRNAは、リボソームへのmRNA結合を促進する5′リーダー配列を持たない。現在、哺乳類ミトコンドリアでの翻訳開始機構についての知見はほとんど得られておらず、mRNAの結合、開始因子–tRNAの動員および開始コドン選択が起こる仕組みはほとんど分かっていない。今回我々は、哺乳類ミトコンドリアから得られた完全な翻訳開始複合体のクライオ(極低温)電子顕微鏡構造を3.2 Åの分解能で決定し、哺乳類ミトコンドリア開始因子2(mtIF2)に存在する、さらなるドメイン挿入が持つ機能について述べる。この挿入部分は、暗号解読センターを閉じることでリーダーを持たないmRNAの結合を安定化しており、暗号解読に関わるrRNAヌクレオチドにコンホメーション変化を引き起こす。我々は、fMet–tRNAMetの特異的識別とそのGTPアーゼ活性の調節に必要な、mtIF2独自の特徴を明らかにした。さらに、翻訳を開始するリボソーム中のリボソームトンネルはミトコンドリアタンパク質mL45のN末端部分の挿入によりふさがれていて、トンネルはリボソームが伸長様式に切り替わると露出することも観察された。これはミトコンドリアリボソームをミトコンドリア内膜のタンパク質輸送孔へと向かわせるためのもう1つの仕組みとなっている可能性がある。

