古気候学:氷期の海洋循環の変化と関連した北太平洋の淡水事象
Nature 559, 7713 doi: 10.1038/s41586-018-0276-y
大量の淡水の海洋への一時的な流出が、氷期の全球海洋循環と気候変動に大きな影響を及ぼしたことを示す有力な証拠が存在する。北大西洋域において、北大西洋への大量の淡水の流出事象はハインリッヒ亜氷期と呼ばれる特徴的な寒冷期と関連していた。これに対し、北太平洋域における淡水の履歴はまだよく分かっておらず、結果として、ハインリッヒ亜氷期における北太平洋と北大西洋の気候の関連性の存在とその考えられる規模に関する議論が続いている。今回我々は、ハインリッヒ亜氷期における北大西洋循環の変化と北米のコルディレラ氷床から北太平洋北東部への淡水の流入の間に強い関連性があることを見いだした。過去5万年にわたる珪藻のδ18O(酸素の安定同位体18Oと16Oの比率の尺度)の記録から、表層海水のδ18Oが1000分の2~1000分の3減少したことが示され、これは約2~4実用塩分単位の塩分減少に相当する。この事象は、ハインリッヒ亜氷期1と4における北太平洋北東部での漂流岩屑の堆積の増大や海面のわずかな寒冷化と同時に生じていたが、ハインリッヒ亜氷期3では生じていなかった。さらに、同位体を組み込んだモデルの結果からは、ハインリッヒ亜氷期における赤道太平洋東部の温暖化が北大西洋のシグナルを北太平洋北東部へ伝達するのに重要であり、北太平洋北東部では、ハインリッヒ亜氷期1と4において付随する亜表層水の温暖化によって、コルディレラ氷床から識別できるほどの淡水の流出が生じたことが示唆された。一方、過去5万年間で最も寒冷な期間であるハインリッヒ亜氷期3では、北半球高緯度域の著しい寒冷化が背景となって、北太平洋北東部の亜表層水の温暖化が妨げられ、それによってコルディレラ氷床からの淡水の流出が増加した。組み合わせると今回の結果は、氷期における北大西洋と北太平洋の淡水流出の応答を結び付けるダイナミクスに、非線形的な海洋と大気の背景相互作用が複雑な役割を果たしていたことを示している。

