DNA損傷:高速でのフォーク進行がDNA複製ストレスとゲノム不安定性を誘導する
Nature 559, 7713 doi: 10.1038/s41586-018-0261-5
ゲノムの完全性を保証するために、DNAの正確な複製は厳密に調節される必要がある。ヒト細胞では、数千の複製起点がS期に協調的に活性化され、複製フォークの速度は細胞周期に合わせてDNAを完全に複製するように調整される。複製ストレスはフォーク停止を引き起こして、ゲノム不安定性を誘導する。複製ストレスは、がんの促進における新たな役割が分かってきたものの、その機構的基盤についてはほとんど解明されていない。今回我々は、ポリADPリボースポリメラーゼ(PARP)の阻害は、フォークの伸長速度を上昇させ、フォークの停止を引き起こさないことを示す。これはPARPの阻害剤がフォークの停止と崩壊を誘導するという、これまでに受け入れられてきたモデルとは対照的である。フォークの進行が、正常速度の40%を超えて異常に加速するとDNA損傷につながった。複製起点の発火に関与するtreslinタンパク質あるいはMTBPタンパク質を除去した場合も、許容閾値を超えるフォーク速度の上昇が起こり、DNA損傷応答経路が誘導された。機構的には、ポリADPリボシル化とPCNAの相互作用因子p21Cip1(p21)がフォーク進行の重要な調節因子であることが分かった。ポリADPリボシル化とp21は、PARP1タンパク質とp53タンパク質によって調整される協調的な調節ネットワークにおけるフォーク速度の抑制因子として機能する。その上、フォークレベルでは、ポリADPリボシル化は複製ストレスのセンサーとして機能する。DNA損傷部位はフォーク停止を誘導して、通常は分解や修復が行われるが、PARPが阻害されていると、DNA損傷部位は複製装置に認識されなくなる。概念的には、我々の結果から、複製フォーク進行の加速は、複製ストレスやDNA損傷応答を開始させる一般的な機構であることが示された。今回の知見は、フォーク速度を制御する機構についての理解を深めるとともに、ゲノム(不)安定性や合理的ながん治療についての示唆も含んでいる。

