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神経科学:逃避決定を計算するためのシナプス閾値機構

Nature 558, 7711 |  Published: |  doi: 10.1038/s41586-018-0244-6


切迫した危険を回避することは、生存の基礎となる本能的行動であり、それには感覚刺激が無害か脅威かを識別することが必要である。脅威なしとなれば、動物は必須な資源の採餌ができるが、脅威のレベルや危害の可能性が増すにつれ、安全を求めるか否かの決定を下さなくてはならなくなる。本能的防御行動についてはこれまで齧歯類で研究されてはいるが、逃避を始めるべき脅威のレベルを脳がどのように計算するかは、ほとんど分かっていない。今回我々は、マウスで逃避の起こりやすさおよび欲求は本質的脅威の顕著さと対応し、脅威レベルと逃避の閾値間の差を計算する1つのモデルでうまく説明できることを明らかにする。自由行動下のマウス中脳に、カルシウム画像化と光遺伝学を適用した結果、内側上丘(mSC)深層の興奮性ニューロンの活動は、脅威刺激の顕著さを表現して逃避を予測させるのに対し、背側水道周囲灰白質(dPAG)のグルタミン酸作動性ニューロンは、逃避選択のみを符号化し、逃避欲求を制御していることが分かった。我々は、mSCニューロンからdPAGニューロンへのフィードフォワード単シナプス興奮性結合(弱く不安定な結合だが逃避行動に必要)が、dPAGの活動と逃避開始のためのシナプス閾値を決めていることを示す。この閾値は、mSCネットワークの活動亢進によって超えられるが、それはmSC内の短期シナプス促通と反回性興奮が、dPAGへのシナプス駆動力の増幅と維持を行っているためである。従って、dPAGのグルタミン酸作動性ニューロンは、mSCから受ける脅威情報を閾値化するシナプス機構を用いて、逃避決定と逃避欲求の計算を行っており、脳が重要な行動計算を行うやり方の生物物理学的モデルが提供された。

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