分子生物学:RNAiとヒストンH3K9メチル化の共役によって仲介されるエピジェネティックな遺伝
Nature 558, 7711 doi: 10.1038/s41586-018-0239-3
ヒストンの翻訳後修飾(PTM)は細胞のタイプに特異的な遺伝子発現の基盤を形成するエピジェネティックな状態に関連している。ヒストンのPTMはいったん確立されると、すでに存在するヒストン修飾を認識して新たに結合したヒストンに同じ修飾をするのを触媒する酵素が関わる正のフィードバックによって維持され得る。最近の研究から、野生型細胞では、ヒストンのPTMを基盤とする正のフィードバックは他の入力がない場合には弱過ぎてエピジェネティックな遺伝を仲介できないことが示唆されている。RNA干渉(RNAi)が仲介するヒストンH3リシン9のメチル化(H3K9me)とヘテロクロマチン形成は、短鎖干渉RNA(siRNA)の増幅が関与する正のフィードバックがヒストンのPTMの正のフィードバックに直接共役し得るというエピジェネティックな遺伝機構候補の1つを示している。しかし、これら2つのフィードバックループの共役が、DNA塩基配列とは独立に、また、ゲノム規模のクロマチン構造や転写の破壊を可能にする変異が存在しなくても、エピジェネティックなサイレンシングを維持できるかどうかは分かっていない。今回我々は、分裂酵母(Schizosaccharomyces pombe)を用い、野生型細胞において1つのユークロマチン遺伝子のsiRNA誘導性のH3K9meとサイレンシングが、多数回の有糸細胞分裂や減数細胞分裂の際に、シスにエピジェネティックに引き継がれることを示す。この遺伝には、二次性siRNAとH3K9me3が標的遺伝子とその周囲の領域に拡大することが関与しており、RNAiとH3K9meの両方を必要とすることから、siRNAとH3K9meの正のフィードバックループが相乗的に機能してサイレンシングを維持していると考えられた。対照的に、ヒストンのPTMの正のフィードバックのみによって維持された場合には、サイレンシングは消去されるが、それはEpe1によって促進されるH3K9脱メチル化、あるいは、Epe1の非存在下でも発現した1つの対立遺伝子を含む細胞との接合後に起こる対立遺伝子間相互作用によるものである。これらの知見は、RNAi装置がDNA塩基配列あるいは作用を持つ変異とは独立に、世代を超えてエピジェネティックな遺伝を仲介できることを実証しており、siRNAとH3K9meの正のフィードバックループの共役には対立遺伝子のエピジェネティックな修飾が消去されないよう保護する役割があることを明らかにしている。

