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惑星科学:火星の極めて急速なマグマオーシャン結晶化と地殻形成の証拠

Nature 558, 7711 doi: 10.1038/s41586-018-0222-z

始原的地殻の形成は地球型惑星の進化における重要な段階だが、この過程が生じた時期はよく分かっていない。鉱物のジルコンは、ウラン–鉛(U–Pb)同位体壊変系によって年代を正確に測定でき、その後の変質にも強いので地殻形成を絞り込む強力な手段となる。さらに、ジルコン中のハフニウム濃度が高いと仮定すれば、ルテニウム–ハフニウム(176Lu–176Hf)同位体壊変系をジルコンの供給源の性質と形成時期の測定に用いることができる。火星隕石からは、結晶化年代が約44億3000万年(4430 Myr)前の太古の火成ジルコンが報告されており、これは火星南部の高地由来のレゴリス角礫岩起源と考えられている。こうしたジルコンは、再融解した始原的火星地殻を反映していると解釈される進化した岩質の中に存在するため、火星の初期の地殻進化に関する知見をもたらす可能性がある。本論文では、火星のレゴリス角礫岩NWA 7034から得られた太古のジルコンの同時期の高精度U–Pb年代とHf同位体組成について報告する。U–Pb年代がほぼ一致した7個のジルコンの207Pb/206Pb年代は、4476.3 ± 0.9 Myr前から4429.7 ± 1.0 Myr前の範囲にあり、このうち最も古いものは、これまで直接的に年代が測定された火星の物質の中で最も古い。全てのジルコンは、4547 Myr前より前に始原的マントルから抽出された、濃縮された安山岩に似た地殻を受け継いだ初期の非放射性Hf同位体組成を記録している。従って、火星にはこの時期までに始原的地殻が存在して約100 Myrの間残存し、その後おそらく衝突によって再形成され、マグマを生成し、そこからジルコンが結晶化したと考えられる。安定した始原的地殻の形成が惑星分化の最終的な結果であると仮定すれば、今回のデータは、火星における集積、核形成、マグマオーシャンの結晶化が太陽系形成の20 Myr後までに完了していたことが必要となる。こうした時間スケールは、極めて急速なマグマオーシャンの結晶化によって重力的に不安定な成層化したマントルが生じ、その後逆転して、上昇する堆積物の減圧融解と、始原的玄武岩地殻や安山岩地殻の形成を示唆するモデルを裏付けている。

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