経済学:国連の気候緩和目標の下で経済的損害が減少する大きな可能性
Nature 557, 7706 doi: 10.1038/s41586-018-0071-9
気候変動に関する国際協定は、一般的に政策目標として地球温暖化のしきい値を明記しているが、こうした気温目標を達成して得られる相対的な経済的利益は、あまり解明されていない。不確定要素には、気温変動の空間パターン、こうした変動に対する全球および各地域の経済生産の応答、現在消費を将来消費に変えることへの社会の意欲が含まれる。今回我々は、過去の証拠と国家レベルの気候予測および社会経済的予測を組み合わせて、国連(UN)の地球温暖化に関する1.5°Cと2°Cの目標と、現在のUNの国家レベルの緩和の約束(合わせると温暖化が3°Cに近づく)に伴う経済的損害を定量化した。その結果、今世紀末までに温暖化を1.5°Cに抑制できれば、2°Cの場合よりも経済的損害を削減できる可能性が75%以上あり、公定歩合が3%(2010年米ドル)の条件では、全球の積算利益が20兆米ドルを超える可能性が60%以上あることが見いだされた。さらに、1.5°Cでは、地球の人口の90%を占める71%の国々において経済的損害を削減できる可能性が75%以上あり、貧しい国ほど最大の利益が得られることも見いだされた。今回の結果は、大規模な海水準上昇などのこれまでにない極端な結果が2°Cの温暖化では生じるが1.5°Cの温暖化では生じないとすれば、1.5°Cに温暖化を抑えることによって得られる利益を控えめに見積もっている可能性がある。さらに、長期的な成長率が既存の社会経済シナリオに含まれている成長率を超えることの不確かさなどの、定量化されていない不確定要素を含めると、影響の見積もりの正確さが低くなる可能性もある。我々は、温暖化が2°Cを超えると、全球の経済生産がかなり大きく低下することを見いだした。2000~2010年の水準を超えて温暖化しなかった世界に比べて、2100年までには、現在の国家の約束が示す2.5~3°Cの地球温暖化では一人当たりの生産が15~20%減少し、4°Cの温暖化では30%以上低下すると予測される。従って、1.5°Cの目標を達成できれば、損害の総額が削減され、世界の不平等を小さくできる可能性があり、2°Cの目標を達成できなければ、経済損失がかなり大きくなる可能性があることを、今回の結果は示唆している。

