分子生物学:ヒトの初期発生におけるクロマチン解析で明らかになった接合子ゲノム活性化の際のエピジェネティックな変化
Nature 557, 7704 doi: 10.1038/s41586-018-0080-8
受精に際して、着床前の発生過程ではクロマチンの徹底的な再構成が起こる。しかし、この期間のクロマチンの全体像やその分子動態はヒトではほとんど調べられていない。今回我々は、改良したATAC-seq(assay for transposase-accessible chromatin with high-throughput sequencing)を用いて、ヒトの着床前発生におけるクロマチンの状態を調べた。ヒトの初期胚では広い範囲にわたる接近可能なクロマチン領域が見つかり、これらはシス調節配列や転位性遺伝因子と推定される領域と広範に重なっていた。統合解析から、ヒトとマウスの初期発生の間、また、in vivoのヒトの多能性とヒトの胚性幹細胞との間に、調節回路の保存および分岐の両方が見られることが示された。さらに、接合子ゲノム活性化(ZGA)の前に広範囲にわたって開いたクロマチン領域が存在することが分かった。接近可能なクロマチン座位はCpGが豊富なプロモーターで容易に見つかった。意外なことに、他の接近可能なクロマチン領域の多くは、ヒトの卵母細胞のDNA低メチル化ドメインと重なる遠位領域にあり、転写因子結合部位が豊富に見られた。そして、これらの領域の大部分はZGAの後に転写依存的に接近できなくなった。特に、ZGAの際に起こるこのような大規模なクロマチン再構成はマウスで保存されていて、ゲノムサイレンシングに特異的に関連している非カノニカルなヒストン標識H3K4me3の再プログラム化と相関することは重要である。まとめると、これらのデータは、哺乳類のZGAの際のクロマチンの変化の基礎となる保存された原理を明らかにするだけではなく、ヒトの初期発生やin vitro受精の際のエピジェネティックな再プログラム化についての我々の理解を深めるのにも役立つ。

