化学:ナノスケール合成とアフィニティーランキング
Nature 557, 7704 doi: 10.1038/s41586-018-0056-8
薬剤の大半は、化学合成と生化学試験を繰り返し行って、治療に有望と考えられるタンパク質標的への特定化合物のアフィニティーを最適化することによって開発される。この過程は、1060以上の「薬剤のような」可能性の化学空間から候補分子を選択しなければならず、各分子の合成に用いられる単一反応には、触媒、配位子、添加剤などのパラメーターに107以上の妥当と思われる組み合わせがあるため、困難である。ハイスループット化学合成法と生化学アッセイの融合によって、この膨大な探索空間を容易に調べられるようになり、新しい薬剤や化学プローブの探索が簡素化されると思われる。ハイスループット化学合成の小規模化によって反応空間の迅速な評価が可能になったが、これまでのところ、そうした合成とバイオアッセイの融合は、単一反応条件下で合成したほんの少数の類似体を分析する低密度反応アレイでしか実現されていない。オン・ビーズ技術、オン・サーフェス技術、オンDNA技術、質量コード化技術などのバイオアッセイと組み合わせた高密度化学合成法では、必要物質量が大幅に削減されるが、潜在的反応性を有する担体と基質との共有結合が必要であり、高希釈度で行わねばならず、混合物形式で操作する必要がある。こうした反応属性のために、複雑な混合物中に存在する多くの官能基によって容易に被毒する遷移金属触媒や、反応速度論によって高濃度の反応物が求められる変換の適用が制限される。今回我々は、ハイスループットのナノモルスケールの合成と無標識のアフィニティー選択質量分析バイオアッセイを組み合わせた。各反応を個別のウェルにおいて0.1モル濃度で行うことで、1反応当たり0.05 mg未満の基質を消費しつつ遷移金属触媒反応が可能になった。次に、アフィニティー選択質量分析バイオアッセイを用いて標的タンパク質に対する反応生成物のアフィニティーをランク付けした。これにより、時間のかかる反応精製が不要になる。今回の方法によって、タンパク質阻害剤を生み出すのに不可欠な主要な合成・試験段階を、出発物質の消費を最小限に抑えて迅速に行うことが可能になる。

